ひとなつの
内容紹介
ギリギリの点数で編入試験に合格し、故郷の鎌鞍学園にて学生生活最後の夏を始めた須藤衛。転校初日から、幼馴染である有栖川巴梨や桃谷賢たちはおろか初対面の人々にまで幅広くその性格を利用され、様々な面倒事を背負うことに。極め付けは、夜の体育祭実行委員就任。母親を楽させるための大事な受験を控えた3年の夏なのに昔からの顔なじみでもあった小野寺先生の綺麗な困り顔に負け、難役をあっさりと引き受けてしまった。幼馴染からの非難ごうごうには「俺に任せな」と、崇拝しているHEROの決め台詞を真似事。とはいえ、自らに向けた親指は大きく震えている。過去、HEROが実現し、街中に苦い思い出を残した「夜の体育祭」「体育祭は昼です。夜の体育祭は、たった1度きり。黒歴史との事です」放送部の看板娘で同じ実行委員の志水亜子ですら、敵か味方かあやふやだ。「兄は兄、私は私です」そんな中、幼なじみの妹である桃谷千春だけが、積極的な賛同をしてくれる。幼い頃は泣いてばかりいた彼女を思うと、その頼もしさにただただ頭が下がる。目線だけは高くなり、景色も、周りも、季節が巡る毎に変化していった。ただ、あの夏に見た光景だけは、きっと変わらない。「この街には、HEROがいる」